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Paul Buchanan [UK]


Mid Air

Mid Air

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Pid
  • 発売日: 2012/05/29
  • メディア: CD


   このアルバムを手にした人のほとんどが、その人にとっての今年のベスト
・アルバムになるに違いないと思っているはずです。 そういう自分もその一人。
そのくらい、このアルバムに対する期待は高いものでした。 静かな部屋で、
ひとりぼっちで聴き終えた後の、ぼんやりした余韻に、次に自分が何をすれば
いいのかわからなくなくなってしまった人も多いのではないでしょうか。

   Paul Buchanan (ポール・ブキャナン)は、イギリスのロック・ミュージックの
最も深くて奥まった部分にひっそりと存在する孤高のバンド The Blue Nile の中心
メンバー。 The Blue Nile といえば、寡作で有名なバンドで、1984年のデビュー
作「A Walk Across The Rooftop」、「Hats」(1988)、「Peace At Last」(1996)、
「High」(2004)と28年間で4枚のアルバムしか発表していません。 
   そして、2012年、The Blue Nile 名義の最新作から8年という順当な間隔を
経て、届けられたのが、Paul Buchanan の初めてのソロ・アルバムなのです。

   この事実だけで、十分。 届いたCDも数日間寝かせてから聴いたほうが、
いいのではないかと思ってしまうほど、貴重な出来事と言えるでしょう。

   この作品に対するレビューとしては、ミュージックマガジンの7月号、200
ページに掲載されている渡辺亨さんの文章が素晴らしいので、ぜひ、ご一読
ください。 『ほぼ声とピアノだけで綴られた「喪失」と「回復」のアルバム』という
見出しは、まるで小説の帯に書かれているようなフレーズですが、まさにその
とおりの内容です。 もともと、The Blue Nile の音楽は夜更けから夜明けに
かけてが似合うものだったのですが、電子的な音が排除された本作は、さら
に闇のなかにゆっくり踏み出していくような感覚です。 彼にしか描くことが
できない、絵画のような音楽がここに存在しているのです。

   僕が入手したのは1000セット限定のデラックス・エディションでしたが、
それにはもう1枚CDが入っていて、ここだけの曲やインストバージョンが含まれ
ています。 通常盤には歌詞のクレジットがあるかどうか、確認できていません
が、このデラックス・エディションには直筆と思われる歌詞があり、その言葉数
の少なさとシンプルな単語を目で追いながら、聴くことができて、。
  
   ラストの前に「Fin De Siecle」(フランス語で世紀末の意味だそうです)と
いう印象的なインストがあり、ラストの「After Dark」を迎えるのですが、最後の
この曲の歌詞が素晴らしいです。 どんな日本語に訳しても陳腐になってしまう
と思われるので、その歌詞をここに掲載しておきたいと思います。

   Paul Buchanan の「Mid Air」は、今年一番のアルバムかと問われたら、
そんな比較にすること自体が意味のない別世界に存在するアルバムだと、
答えることにしています。

[After Dark]

Life goes by
And you learn
How to watch
Your bridges burn
Didn't I tell you
Everything I wanted ?
How I loved you
When I love you
Most of all

Evening falls
On me now
A Carousel
On empty ground
Didn't I tell you
Everything I wanted ?
But I loved you
And I love you
After dark

Yeah I love you
And I know you
I was always thinking of you
How I love you
When I love you
After dark.


O.S.T. (We Bought A Zoo) music by Jonsi [ICELAND]


幸せへのキセキ

幸せへのキセキ

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: CD



  映画「幸せへのキセキ」(原題:We Bought A Zoo)のサウンドトラック・アルバムです。
しかし、これがただのサントラではありません。 前回、ここで取り上げたシガー・ロスの
フロントマンである Jonsi のソロアルバムと言えるほどの作品なのです。
  監督のキャメロン・クロウが、映画のイメージを頭に描いて、ヨンシーに音楽を依頼し、
ヨンシーが快諾したことから制作されたというこのアルバムは、同時期のシガーロスの
新作「ヴァルタリ」と交互に聴いて楽しむことのできる素晴らしい仕上がりです。

  その前に映画の話も少し。 キャメロン・クロウ監督にとって6年ぶりとなるこの映画は
、妻を亡くした夫が子供たちのために閉鎖寸前の動物園を買収し、再生させるという実話
を元にしたもの。 実際に映画を見ましたが、主演のマット・デイモンの男らしく、優しく、
子供思いの父親像は本当に感動的でした。 実際に娘をもつ父親として、彼のように
背中で引っ張っていくような行動力には感銘を受けました。 是非とも、見てほしい映画
ですね。
  その映画は新緑の光に包まれているようなイメージなのですが、それを効果的に
演出しているのが、ヨンシーの音楽です。 彼の妖精のようなボーカルと、浮遊感あふれ
るサウンドは、まさに希望の光がさすような雰囲気。 この映画にぴったりです。
  「ヴァルタリ」に比べると、はるかに聴きやすく、親しむやすいサウンドだと思います。
そう考えると、シガー・ロスの「ヴァルタリ」は、エンターテイメント・ビジネスの世界から
はるか遠い渚にたどりついてしまったかのような存在だということに気付きました。
いっぽうで、ヨンシーはアメリカの映画業界、まさにハリウッドとの接点をかろうじて、
ここで見出しているという気がします。 これがバンドとソロとしての音楽の違いでしょう。
仮にそれが逆だとしたら、シガー・ロスというバンドが存在する意味を疑ってしまいます。

  さて、今年のサマーソニック2012で来日するシガーロス。「ヴァルタリ」のサウンド
でライブができるかどうか非常に興味がありますが、もしかして、このサントラの印象的
なフレーズが飛び出したりして。 
  おそらく、そういうことはないと思いますが、どちらに転んだとしてもライブは必見です
ね。 楽しみです。


Sigur Ros [ICELAND]


Valtari

Valtari

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: CD


   かなり孤高の存在となってきたシガー・ロスの久しぶりの新作です。 前作もこの
ブログで取り上げていますが、その日にちは2008年8月13日でした。 あれから、もう
4年も経過しているわけですね。

  前作の「残響」は、彼らのポジションをより強固なものにした傑作ですし、そのクオリティ
は僕の周りにいる音楽ファンならば誰にでも推薦できる内容でした。 アルバムの始まり方
には、はっとさせられるアイディアもあって、一気に聴き進むことができました。

  では、この新作はというと、一言で言うと、「もの静か」です。 昔のシガー・ロスを聴いて
いないので、彼らのキャリアのなかでの立ち位置は語れませんが、少なくとも前作よりは
「地味」です。 水しぶきが木の葉から落ちた瞬間に光に反射するようなきらめきのような
ものは感じません。 ちょっと前に出た「Jonsi & Alex」に近いかなと思ったりしますが、
そうでもないような。
  ふと、ヒーリングサロンとかのBGMを最高級なものに入れ替えるとしたら、このアルバム
がいいのでは、と思ってしまいました。 足裏をマッサージしてもらいながら、聴いたら最高
でしょうね。 あの安っぽいシンセのサウンドでは、まったく癒されませんから。 
  そう考えると、宗教的な匂いもしなくはないです。 何か新しい光に導かれて、ゆっくり
と進んでいくような、そんなアルバムです。

  リズムがほとんど排除されていることもあって、このアルバムを発表した後での彼らの
ライブはいったいどんなものになるのか全く想像できません。 僕は少なくとも、座って聴き
たいです。 もしくは、プラネタリウムのなかとか...

  なんて雑感を並べてみましたが、買って後悔は全くしていません。 彼らの素晴らしさ
は、サウンドだけでなく、アルバムのデザインにもあるからです。 遠くに浮かんでいる船
を映した今回のジャケットは手にとりたくなるようなもの。 紙の素材の質感も含めて、
作品トータルの重要な要素となっていると思います。 もし、あなたがカフェやサロンを営ん
でいるのであれば、持っていて損はないと思います。


Rufus Wainwright [USA]


Out of the Game

Out of the Game

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Decca U.S.
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: CD


  Rufus Wainwright のアルバムの中で、もっともポップで親しみやすい
作品との触れ込みで、話題になったものの、いつもと同じような雰囲気で、
しかるべきところに落ち着いた感のある新作を取り上げてみました。

  プロデューサーに、最近売れっ子の Mark Ronson を起用したとのこと
ですが、彼の指向や過去作品に関する知識もないために、それがこの作品
の内容にどう関与したかはコメントしようがありません。

  ただ、ポップになってわかりやすく、彼の音楽をより身近なところに引き
寄せた貢献は少なからず、プロデューサーの手腕があってのことでしょう。
  1曲目「Out of the Game」のサビなんかは、明るくなった Ron Sexsmith
を思い起こさせます。  おとぎ話のなかに紛れ込んだみたいな「Welcome to
the Ball」、Rufus の美声が堪能できる「Montauk」、変拍子とめくるめくメロディー
が錯覚の世界にいざなうような「Perfect Man」など、個々の楽曲は変化に
富んでいて、飽きさせない展開を見せています。

  ラストの「Candles」に至っては、父親 Loudon Wainwright Ⅲがボーカルで
、伯母の Anna McGarigle がアコーディオンで参加しており、音楽一家で育った
彼らしいエンディングとなっています。 さらにクレジットをよく見ると、コーラス
にはMartha Wainwright (これは妹ですかね)、Jenni Muldaur (マリア・マルダー
の娘?)、そして Lucy Roche (ローチェス三姉妹の誰かの娘?)など、彼の
家族や友達の輪が集っていました。 緩やかな川の流れのような 7分を超える
大作ですが、特別に神聖な雰囲気もただよい、バグパイプの音色が郷愁を誘い
ながら、アルバムは静かに幕を下ろします。

   こうして何度か聴きこむと、たしかに Rufus Wainwright の魅力である美声と
ソング・ライティングの安定感はいかんなく発揮されていました。 しかし、彼が
日本でいま以上に知名度を上げるために必要な決定打となる作品になったかと
いうと微妙な気もします。 けして悪いアルバムではありませんが、そんなことを
考えると微妙な気分になってしまいました。 僕のようなひねくれたリスナーには
もっと難解で遠い存在のままでにいてくれたほうがいいのかもしれません。

   もちろん、それは少数派の意見ということで。


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