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Joe Henry [USA]


レヴァリー

レヴァリー

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2011/10/26
  • メディア: CD


   MUSIC MAGAZINE 誌の年間ベスト10の常連にして、コアな音楽通を毎回唸らせ
ているが、そのホットスポットから放れると、全く無名といってもおかしくない Joe Henry
の新作が発表されました。 多くの評論家が言及しているとおり、現代アメリカの SSW
界において最も異彩を放つミュージシャンであり、まさに鬼才ともいえる Joe Henry です
が、このアルバムが、また前作とは違ったシンプルさをたたえながらも、素晴らしい作品
に仕上がっています。

  Joe Henry の音楽は、もしTom Waits が 1970 年中盤にダミ声に変声しなかった
ら、こんな音楽を奏でていたに違いないと思わせるもの、と勝手に解釈しています。 
よって、すでに近年の Tom Waits は僕の興味の重力からは、軌道を放れて行ってしま
っています。

  Joe Henry のギター、ボーカルに加え、Keefus Ciancia のピアノ、David Pitch の
アップライトベース、Jay Bellerose のドラムスという4人が基本編成で、曲によっては
Marc Ribot などのおなじみのゲストが参加しているというスタイル。 ここ数年の作品
のなかでは最もシンプルで音数が少ないような印象を受けます。 比例して前面に出て
いるのが、渋さをより増した感のある Joe Henry のボーカルです。 歌というよりも、
ストーリー・テリングのように聴こえる曲もあったりして、そこを引き立てているのは、Jay
Bellerose の乾いたスネアの音ですね。 デジタル時代のいま、このような音をどのよう
な機材でレコーディングしたのか気になりますが、小劇場でお芝居を見ているような
錯覚におちいるほどの、近距離さを感じます。 そのあたりは、Joe Henry がプロデュ
サーとして培ってきた才能の蓄積なのでしょう。 音の魔術師、というと陳腐に響きま
すが、まさにそんな感じなのです。

  本作「Reverie」には音楽以外に重要な要素があります。 それはNotes (Life
Beyond Trembling) と題された短編小説のようなものです。 国内盤の解説では
「手記(震えの先にあるもの)」とあるこの文章は、それだけで独立した存在となっており
、これも含めて「Reverie」がひとつの作品なのだということを感じます。 デジタルで
データだけ入手するわけにはいかない、パッケージの魅力がここにはあります。  
英語の理解力のない僕のような人間には国内盤での訳が、今回はとても重宝しま
した。

  このアルバムを両親に捧げると明記した作品。 近年の Joe Henry の創作活動
の充実度を感じるのは毎回ですが、今回は、そこから放たれた鬼気迫る人間力に圧倒
される気がしました。


The Jayhawks [USA]


Mockingbird Time

Mockingbird Time

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Rounder / Umgd
  • 発売日: 2011/09/20
  • メディア: CD


   The Jayhawks 久しぶりの新作は、Rounder に移籍してのリリースとなり
ました。 そして、最大のニュースは Mark Olson の復帰です。 Gary Louris とは
2008 年の年末に Mark Olson & Gary Louris 名義でアルバムを発表していたの
で二人の復縁は明らかになってはいたものの、こうして The Jayhawks 名義で作品
をリリースされると感激もひとしおです。

  前作の「Rainy Day Music」は2003年のリリースでしたので、8年ぶりとなる
この新作。 「Rainy Day Music」はMark Olson が抜けてからの The Jayhawks
のなかでは傑作だったので、この「Mockingbrid Time」への期待は否応にも高まり
ます。 その期待は1曲目の「Hide Your Colors」でいきなり暴発。 いきなりふたりの
コーラスがユニゾンのように延々と続く Jayhawks 節ともいえるサウンドに、のけぞり
そうになります。 アコースティックでシンプルなサウンドに大きな変化はなく、セコイア
の大木が時とともに年輪を増していくように円熟したアメリカン・オルタナ・カントリーの
世界が広がります。

  彼らには、Wilco のような独創性やアイディア、先進性は感じられませんが、
それを理由に過小評価する理由はないと思います。 いい音楽をマイペースで続ける
こと自体が難しい時代だと思うからです。 「She Walks In So Many Ways」のような
ポップな曲に対しては、素直に向かい合って体を動かせばいいし、「Guilder Annie」
のようなバラードの前で目を閉じるも良し、「Black-Eyed Susan」のストリングスに
心を共振させるのです。 自分のメンタル状態を投影するかのような気持で、アルバム
を聴くことが大事です。

   このアルバムは2010年の11月から12月にかけてミネソタ州ミネアポリスでレコー
ディングされました。 この時期には雪も降り始め、かなり寒いと思います。 そうした
空気感を感じたり想像しながら接するのも、秋の夜長の過ごし方としては、悪くない
ですね。 国内盤が発売される気配はまったくありませんが、来年あたりの夏フェスで
待望の来日となってほしい偉大なアメリカン・バンドです。


Wilco [USA]


ザ・ホール・ラヴ

ザ・ホール・ラヴ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2011/09/28
  • メディア: CD


   現代のアメリカにおける最重要バンドである Wilco の新作は自らが立ち上げた
レーベル dBpm からリリースされました。 Bonus Track として Nick Lowe の「I
LoveMy Label」を収録したのも、彼らの新たな出発に対する自画自賛みたいなもの
でしょう。

   アルバムはノイズ的な入りからメロトロンによる音の波、そしてニルスの攻撃的な
ギターがさく裂するアバンギャルドな大作「Art Of Almost」で幕開け。 もしかして、
自信のレーベルをもったことで、マイナー指向が強まったのではないかとの不安がよぎ
りますが、その心配はここまで。 つづくシングル「I Might」からはほぼ4分程度の楽曲
がバラエティに富んで陳列されています。 この「I Might」は先日の、フジロック・フェス
ティヴァル でも演奏したので、耳に覚えがありましたが、曲調のシンプルさが際立って
います。 同じような雰囲気をたたえた「Dawned On Me」、ギターのフレーズが印象
にのこる「Born Alone」、ノスタルジックなカントリー「Capital City」など、かなり淡々と
中盤は進行していく印象です。 ギターが炸裂して目が覚める「Standing O」、アルバム
タイトルでありながら脱力系な「Whole Love」など、あっさりアルバムが終わっていくよう
に思えますが、ラストは12分の大作。 ところが、この曲には斬新なアイディアや意表を
つく展開は用意されておらず、ゆるやかに時間だけが過ぎ去っていく感じでした。

  そういう意味ではボーナストラックの「I Love My Label」は飲み会の締めの一言
みたい立ち位置で、あったほうがしっくりくると思いました。

  正直言って、いまの Wilco の実力を100%フルに発揮した作品だとは思えません。
もっとすごいアルバムが作れるはずだと思います。 このアルバムは、まずは引越しの
ご挨拶ということなのでしょう。  しかしながら、するめのように聴けば聴くほど味わいが
増していくあたりは、Wilco ならではの音楽の魔法が十分にふりかかっていることを表して
います。


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